責任投資方針/議決権行使ガイドライン

責任投資方針

序文

この責任投資方針は、フィデリティ・インターナショナル(以下、フィデリティ投信株式会社を含み、総称して「当社」といいます。)が全ての資産クラスにわたる投資スチュワードシップ責任並びに基本的な運用プロセスについて情報を提供するものです。この方針は、当社が投資先企業に対して期待していること、および投資先企業が当社に期待できることを説明し理解を共有することを目的としています。当社の「建設的な『目的を持った対話』」(「エンゲージメント」)への取り組みのほか、環境・社会・ガバナンス(「ESG」)の課題を当社の運用プロセスに統合する方法(「ESGインテグレーション」)、議決権行使方針、株式公開買付、株主還元に関する当社の考え方を説明しています。当社の議決権行使ガイドラインは付録に記載されています。

1.スチュワードシップ責任

当社は、ポートフォリオ運用に係る投資判断、株主総会における議決権行使、投資先企業あるいは投資候補先企業の経営陣との継続的対話を通じた、アクティブ運用を推進しています。当社は顧客にご満足いただける運用実績を提供することを最大の目的としており、そのために投資先企業について長期的視点で多面的に理解するように努めています。

当社は、社会的責任への意識が高い企業は事業においてもその理念が活かされ、結果的に、企業価値の保全・向上および当社の運用成果の向上につながると信じています。アナリストは投資判断プロセスにおいて、投資リスク・投資リターンに重要な影響があると判断した場合、ESG課題を考慮します。当社では、独自の調査プロセスを通じ、投資対象企業に関係のあるESG課題を把握し、また、企業価値を脅かす可能性のあるESG課題を特定するよう体制を整えています。

当社の経営陣からなるESGオーバーサイト・グループが投資不適格指定方針の基準やその運用を監督し、当社取締役会の承認を得ています。ESG分析は、株式・債券・不動産の各チームのアナリストによって行われますが、ポートフォリオ・マネージャーも主体的にESG要素の潜在効果を考慮し投資意思決定を下しています。当社は顧客に代わって、投資先企業もしくは投資候補先企業の経営陣とこうしたESG課題について建設的な対話に臨んでいます。こうした対話を通じて得られた理解を投資判断に活かすだけでなく、対話を通じて経営陣にESG課題への取組方針や具体的方策の改善について働きかけます。当社は、企業が社会的責任に対する意識を高め、企業価値の向上に具体的に取り組むためにはこうした働きかけが最も効果的な方法だと信じています。

当社では、ESG関連情報の収集やデータベース化など現場でアナリストを支えるESG専任チームが設置されており、同チームは議決権行使も担っています。

当社の基本姿勢として、投資先企業の経営陣を原則支持し、経営陣との対話は基本的に企業調査を目的としていますが、企業戦略やコーポレート・ガバナンスに関して当社独自の見解を持つこともあり、それは企業とのエンゲージメントにおける一つの議題となります。当社の見解が投資先企業の経営陣、または取締役会の見解と異なる場合には、改善案の策定を促すことを検討します。エンゲージメントを行う前に考慮する要因には、課題解決の重要性の評価、課題解決に要する期間、当該事業の内容・状況等が含まれます。また、当該企業の取締役間に見解の相違がある場合にも当社がエンゲージメントを行う可能性があります。実際にどのような行動を起こすかは常に状況に応じて判断し、投資先企業の株式を売却する場合もあります。

投資先企業の経営陣とのエンゲージメントによる働きかけが適切であると判断された場合、当社は当該企業の経営陣や社外取締役との意見交換を通して懸念事項について課題の共有を行います。当社は共通理解と企業の自律的課題解決を尊重した上で目的の達成を目指します。したがって、当社は目的の達成のためにメディアを使うことを望みません。経営陣および社外取締役との対話を重ねた上でも依然として企業価値創造への取組が不十分である場合や一般株主との利益相反を是正しない場合など、見解に隔たりがある場合、株主総会にて取締役選任に反対することがあります。通常、当社は投資先企業の業務に関して提言を行うことはしませんが、過去に行ったエンゲージメントの議題には、取締役会の構成、企業戦略、資本構成、M&A(合併・買収)、株主の権利保護、報酬、その他ESG関連の問題等が含まれます。

2. 投資プロセス

当社のアナリストは投資先企業とのコンタクトの中心となる存在で、独自のファンダメンタル分析に基づき、投資先企業または投資候補先企業への投資判断を表すレーティングを付与する責任を担っています。企業とのミーティングにはポートフォリオ・マネージャーとアナリストの双方が参加することが多く、基本的には長期的な業績に焦点を当てた対話を行います。短期的な業績については、長期的観点の投資理由の見直しが必要か否かの判断材料として参考とします。当社では毎年膨大な数の企業とのミーティングを実施していますが、同一企業と複数回にわたり継続的に入念な対話を行うことで、企業価値の向上がなされているかを確認しています。経営陣との対話の内容には、企業価値および株主のリターン向上を目的とした広範囲にわたるテーマ(事業戦略、競合環境の展望、資本政策、およびコーポレート・ガバナンスに関する課題)が含まれます。

当社では、アナリストまたはポートフォリオ・マネージャーが例外なく投資対象企業と面談した上で投資を実施しています。面談だけでなく店舗や工場見学、電話による情報確認など、アナリストは担当業種のバリューチェーンを網羅する専門家として幅広い知識を備えることが求められます。

入念な調査によって投資先企業を正しく理解することにより、事業戦略の成果を享受するまで待つことが可能になると考えます。そのことを励行するために、週次、月次、四半期毎に数々の情報共有・意見交換の場を設け投資先企業の事業機会や注意すべき課題を確認しています。運用する個々のポートフォリオについても四半期毎にチーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)とリスク分析担当者によるレビューが行われ、リスク特性、ボラティリティ、パフォーマンス、投資先企業と保有状況など、詳細にポートフォリオ・マネージャーの説明力が試されます。

投資先企業について何らかの懸念が生じた場合、あるいは経営課題についての認識を確かめる際には、経営陣または社外取締役との面談を申し入れます。こうした経営陣、社外取締役との面談には、ポートフォリオ・マネージャー、アナリスト、エンゲージメント責任者が参加し、通常その議題にはESGに関する事項が含まれます。経営戦略に関する議題はもちろんのこと、取締役会の実効性や経営のサクセッション・プランなども議題となります。こうした議題の場合、年に何度も対話することは稀ですが、何らかの経営改革を求めているような場合は、経営陣または社外取締役の中で同一人物と継続して改革の進捗を確認していきます。議題によっては、社外監査役や監査委員または監査等委員を務める社外取締役と面談し監査や内部統制を含むリスク管理に関わる課題や取組について意見交換を行います。

投資先企業の信用リスクに関しては、当社の債券アナリストが企業の事業や見通し、特に信用力に関する理解を深めるための分析を行います。企業とのエンゲージメントは、当社の債券アナリストのアプローチの一部でもあり、投資やESGに関して懸念がある場合は、債券の発行体とのエンゲージメントを図ります。

当社の不動産チームは、不動産のライフサイクル全般における責任不動産投資(RPI)に関連する課題を特定します。この中には環境リスクの評価やエネルギー使用量の継続的な検証が含まれます。

3.ESGインテグレーション

ESG分析は、運用チーム内のアナリストレベルで行われ、ポートフォリオ・マネージャーも主体的にESG要素の潜在効果を考慮し投資意思決定を下しています。

当社の運用手法は、「ボトム・アップ・アプローチ」に基礎を置いています。アナリストとポートフォリオ・マネージャーは財務分析に加え、投資候補先の定性分析を行います。定性分析には、ビジネスモデル、顧客、取引先の精査が含まれ、企業訪問によって投資先企業一社一社の個性の把握に努めます。こうした調査の視点にはESGの要素も組み込まれています。

産業調査や企業調査の上で考慮するESG要素として、以下のようなものが挙げられます。

  • コーポレート・ガバナンス(例えば、機関設計、取締役会の実効性、委員会の実効性、役員報酬)
  • 資本効率(例えば、現預金の使途、事業の進退)
  • 規制変化(例えば、情報開示、事業再編、税制)
  • 重要な経営資源に対する脅威(例えば、人材、立地、水資源)
  • ブランドや風評問題(例えば、リコール、労働環境、サイバーセキュリティ)
  • サプライチェーン管理(例えば、死亡災害、休業災害、人権)

債券チームもESG要素を考慮しています。ソブリン・クレジット・チームが考慮する要素は、国家の経済的および政治的状況の長期的な継続性であり、関連するESG要素が国ごとの分析において評価の一部となっています。

当社の不動産チームは、不動産投資における責任投資アプローチが、当社のみならず、顧客からの信用やイメージに影響を与え、また当社が運用する不動産のパフォーマンスにも影響を及ぼす可能性があると考えます。株主ではなく家主という立場であるため、テナントの内部統制プロセスに関して知り得る範囲には限界があるものの、テナントが入居している建物に関わるESG要素を不動産チームが管理することは可能です。

当社では、定期的にアナリスト研修・スキル強化研修を行っておりESGは研修科目の一つです。これらに加え、適宜、様々なESGに関する環境変化やイニシアチブの進展、フィデリティの戦略などについてトレーニングを実施しています。ESGチームは、外部セミナーへの参加や関連会議へ出席しESGに係る動向把握やESGインテグレーション改善への示唆などを収集しています。

当社は特定の企業や特定の産業、または、特定のテーマについて調査を外部委託することがあります。世界各国で様々な外部専門機関の調査を活用しており、ESGにおいても外部ESG専門機関と契約し自前の独自調査を補強しています。

外部ESG専門機関によるESG評価と調査レポートは当社の調査データベース(RMS)にデータフィードしており、アナリストおよびポートフォリオ・マネージャーは常に最新情報を入手できる体制となっています。加えて、当社独自のESGレーティングはアナリストが発行する調査レポート(社内限り)の「発行会社の基本情報」欄に掲載されており、投資判断の重要情報として活用されています。投資先企業についての訴訟、不祥事、不正など、ビジネスへの悪影響や風評問題に発展する可能性のあるアラート情報についても外部ESG専門機関から迅速にデータフィードする体制となっています。

当社社内アナリストによる企業評価と外部ESG専門機関の活用とによって、双方の評価結果の差異を浮き彫りにすることができ、さらにその差異の原因を調査することによって精度の高い企業価値評価に役立てています。

4.ESG投資不適格指定方針

責任投資のアプローチの一つとして、特定のESG判断基準に基づき投資不適格指定を行い該当する企業を当社の投資ユニバースから外すことを考慮します。国際条約、関連する法律や指針を尊重するとともに、当社のESG判断基準の策定には専門機関の調査結果も取り入れます。ESGオーバーサイト・グループは、ESG評価による「投資不適格指定方針」の定義および取締役会承認に基づく同方針の適用と具体的な指定企業リストの策定を司っています。指定企業リストは、緊急見直しの事象が発生しない限りESGチームが半年毎に見直しを行います。「投資不適格指定方針フレームワーク」はこちらからご覧いただけます。

https://www.fidelity.co.jp/fij/about/governance/framework.html

特定のお客様から、特定の業種あるいは企業を当該顧客口座において投資ユニバースから除外するよう要請を頂くことがあります。実例として、武器製造、アルコール、タバコ関連の企業、自国の株式あるいは当該顧客が経済的な利益を有する企業が挙げられます。こうした要請に対しては状況に応じて検討しますが、一般的には顧客の運用ガイドラインに組み込む形で対応しています。

5. ESGチームの役割

当社には専任のESGチームがあり、運用チームと緊密に連携し、投資プロセスとスチュワードシップ責任、エンゲージメント活動、ESGインテグレーション、株主総会における議決権行使など、当社の投資アプローチを統合する責任を持ちます。 ESGチームは、運用チームにおける以下のようなESGインテグレーションを支援する上で重要な役割を果たします。

  • 当社の議決権行使方針・ガイドラインの履行
  • ESG課題に関する議題を含む、投資先企業とのエンゲージメント実施
  • 全ての資産クラス、グローバル各拠点の投資チームと緊密に連携、調査分析および投資判断へのESGインテグレーション推進 
  • アナリスト・レポート、業界分析、ポートフォリオ分析、などESG情報の社内向け提供
  • ESGに関する顧客からの照会への対応
  • ESGインテグレーションや議決権行使に関する顧客向け報告
  • 世界各国のESGテーマや潮流についての習熟、研鑽
  • 注目されるESG課題やESGインテグレーションに焦点を当てた外部セミナーやコンファレンスへの出席
  • 運用チームおよび社内各部門におけるESGトレーニングの実施

ESGチームのメンバーは、多数の外部ガバナンス関連組織に関与し、英国投資協会(IA)やテイクオーバー・アンド・マージャーズ・パネル(The Panel on Takeovers and Mergers)、英国産業連盟および国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)の役職を務めています。また、国連責任投資原則(「UNPRI」)、英国スチュワードシップ・コード、日本版スチュワードシップ・コード、台湾の責任ある投資家のためのスチュワードシップ原則、香港の責任あるオーナーシップ原則に署名しています。

また、アジア・コーポレート・ガバナンス協会(ACGA)、アジア証券業金融市場協会、香港投資基金協会、日本の投資家フォーラム、イタリア投資運用協会、英国サステナブル投資金融協会(UKSIF)、英国の投資家フォーラムなど、世界中の多くの関連団体に参加しています。

6.議決権行使方針

議決権行使に関する情報は、当該企業のほか、議決権行使助言会社、社内の調査部門および外部の調査機関から提供されます。また、投資先企業と直接的な対話を行っています。

議決権行使は、必要に応じてポートフォリオ・マネージャーと協議した後、常に当社の確立された株主議決権行使方針およびガイドラインに沿って行われます。議決権行使に関しては、法令等の義務がある場合、または議決権行使による株主利益が、関連して発生すると見込まれる費用を上回ると期待される場合には、該当する全株式についてその議決権を行使します。いつくかの市場ではいまだに株主総会前に株式の一定期間の取引停止または預託が義務付けられていますが、当社は保有する議決権を少なくとも50%行使し、残りの株式については預託せずに取引可能な状態(当社の最小投資基準に適合する額)にしておくという方針を取っています。また、投資先企業固有の状況や各国固有のベスト・プラクティスも考慮に入れています。当社の議決権行使についてのアプローチと方針は、適用されるすべての法令ならびに規則、また各ポートフォリオそれぞれの投資目的に則しています。

議決権行使に関する潜在的な利益相反については、ESGチームがその管理に責任を持ちます。ファンドの投資先企業の中に留意すべき企業が複数存在する場合、当社は常に当該ファンドの利益のために行動します。また、当社と利益相反が生じる可能性のある議決権行使に関しては、利用する主要な外部リサーチ提供者の推奨に従って議決権を行使するか、かかる推奨がない場合には議決権を行使しないこともあります。顧客からの特別な指示がない限り、当社は株主総会に出席して議決権を行使することはありません。

株主総会において否決されることもあり得る会社提案の議案は、ただ株主総会に提出するのではなく、事前に株主と対話するように対象企業の経営陣に促しています。議案に関する見解が当該企業のそれと異なる場合、投資の規模によっては早い段階で取締役会と議論し、その違いを解消・解決するように努めています。事前の協議が不調に終わり、会社提案に反対票を投じる場合は、企業側の経営陣に反対理由を理解してもらうよう努めています。また、企業から必要な情報が開示されていない場合または企業に警告を発する目的で、例外的に棄権することもあります。議決権は、常に一般株主(受益者)の利益を最大化するために行使することとしています。

前述の通り、通常は総会へ出席することはありませんが、状況によっては出席して議決権を行使し、さらに当社の立場を説明する声明を出すこともあります。例外的な状況においては、株主提案を行い株主総会に諮ることもあり得ます。また、株主総会決議を出席株主による挙手により行っている企業に対しては、株主総会のすべての決議が投票によって行われるよう働きかけを行っています。

当社の議案別議決権行使の結果は当社のウェブサイト上に公開されています。当社では、議決権行使状況に関する四半期報告のほか、ガバナンスとエンゲージメントに関するより詳細な年次報告書を機関投資家顧客向けに作成しています。

当社では、第三者を通じて極めて限定的に貸株業務を行っており、合意された基準額まで貸し出されることがあります。顧客にとって貸株による収益が議決権行使の価値よりも高いと判断される場合は貸株の返還を請求することはありませんが、顧客の利益に資すると判断する場合には返還請求を行います。経済的あるいは戦略的に極めて重要な議案、議論が分かれ賛否が拮抗する可能性のある議案、当社が会社提案に反対する議案、タイムリーに判断するための十分な情報が提供されない議案への行使を行うケースなどが含まれます。尚、議決権を増加させるために株を借りることはありません。

7.株式公開買付

前述のとおり、当社は優良な経営陣を基本的に支持しますが、当社が妥当と考える株主リターンの期待水準を継続的に下回っている場合や、敵対的買収価格の水準が対象企業の長期的価値を十分に反映しているものであると判断される場合には、敵対的買収を支持する場合があります。しかし当社は公開買付への対応を決定する前にあらかじめ双方の主張に公平に耳を傾けるようにします。また基本的に買付に応じることを確約するような誓約書には署名しません。

企業買収という行為には極めて高いリスクが存在するものの、高い成果を得る可能性もある手段と考えるため、買収を試みる場合は、対象企業が買収による事業面や財務面への影響について、徹底的に検討を行うことを期待します。当社が大株主である場合や、買収案件が当該投資先企業の投資価値に重要な影響を与える場合は、早い段階で直接協議することを求めます。

当社は、二社による合併の場合には、早期において双方の非業務執行取締役が協議を行い、合併後の会社の執行体制等を検討するなど、意義のある役割を果たすことを期待しています。

現経営陣によるマネジメント・バイアウト(MBO)は株主に価値を提供する効果的な手段である場合もありますが、同時に重大な利益相反の危険性もあります。そのため独立社外取締役や任命された外部者が初期段階から全面的に関与し、できる限り透明性の高い、全株主に対して公正なMBOが実施させることを当社は期待します。特に、資金面での支援者に対し独占的権利を付与する前に、可能であれば資金支援者以外の第三者にも参加を促し、競争入札を通じたMBO提案の検証を行うことを取締役会に推奨します。また当社が大株主である場合、早い段階で直接協議することを望みます。

8.株主還元

当社は、企業が営む事業の予想リスク調整後リターンが対象企業の資本コストを上回る場合には、企業に対し、適切な管理と資本構成を維持しつつ投資を行うよう促します。また、資本再投資から得られる潜在的利益を、配当支払いや自社株買戻しを行う場合と比較した上で、株主にとって最適な方法を決定すべきであると考えます。配当は企業に投資することで得られる、株主にとって不可欠な報酬であると考えます。そこで、企業が高い成長率や高い内部収益率を維持している場合でも、企業のキャッシュ・フローの妥当性を実証するためにも配当支払いは有益であると考えます。

企業が資本コストを上回るリターンを上げる事業を見つけられない場合には、配当支払額を増やすか、あるいは自社株買戻しによる株主還元を望みます。このような株主還元は、資本を有効活用する戦略的ビジョンが欠如しているということではなく、その時点における最善の判断だと考えます。また、適切な株主還元を決定する際には企業と株主双方にとっての税負担の影響度も考慮に入れるべきであると考えます。

9. 取締役会

取締役会の機能発揮は、企業の成功と長期的な持続可能性を左右する決定的な要因となります。当社は、取締役の高潔さ、能力、資質を継続的に評価しています。また、当社は、取締役会および各委員会の一定の独立性は株主価値を保全する上で極めて重要であると考えます。

当社は、取締役会における独立社外取締役の実効性を真摯に評価し、状況に応じて自律的に独立社外取締役を増員している企業を強く支持します。さらに、取締役会は、取締役の経験や年齢、性別など、構成の多様性に配慮することにより、その機能の最適化を図るべきと考えます。また、取締役個人に対する継続的な実績評価を通じて、各取締役が責任を果たしているかどうかを明らかにすべきと考えます。

10.役員報酬

取締役会が有能な業務執行取締役を確保し鼓舞する能力を有するかどうかは株主にとって重要な関心事です。当社の見解では、主に報酬委員会が適正な水準の報酬を定める責任を持ち、報酬水準は比較可能な市場水準に鑑みて判断されるものですが、こうした人材の報酬体系は株主利益と一致し、対象者の貢献に見合ったものでなければなりません。企業はまた、業務執行取締役の報酬を企業業績への貢献と株主リターンの観点からバランスの取れたものにするよう努力する必要があります。

当社は業績連動報酬の概念を支持しており、適正に設計されたインセンティブ報酬制度は経営陣と株主の利益を合致させる役割を果たすものと考えます。また、当社は経営陣の自社株保有を推奨しています。取締役が長期にわたって自社株を保有することにより、それが役員報酬において重要な位置づけとなり、長期的には配当収入が報酬の大きな構成要素になることが期待できます。

報酬委員会は、経営陣に対する業績連動報酬を検討する場合、株主利益の希薄化との適正なバランスを確保する重要な役割を果たさなくてはなりません。また、インセンティブ制度の導入・変更に当たっては株主総会決議とすべきであり、こうした制度は経営陣による企業の競争優位性の改善と株主価値の向上を確実に反映するように設計される必要があります。こうした制度の提案においては、株主の意思決定に必要な予想されるコストと期待される効果など、十分な情報を開示する必要があり、一方で、不必要な煩雑さは避けなければなりません。株主総会によって承認された後も、その制度が当初設定した指標に対して実際にどのように運用されているかを継続的に開示していくことが求められます。

当社は、予め設定した指標の達成度に応じた株式報酬付与制度を強く支持しており、指標の達成度は絶対値および相対的成果の組み合わせ、さらに株価に直接連動する仕組みであるべきと考えます。多くの市場(国)において、株式報酬については、その付与日から少なくとも5年間の継続保有期間が義務付けられることを期待します。独立社外取締役に対する報酬は、職務の内容と責任に応じて常に適切であるべきです。また、独立社外取締役の報酬水準が、その独立した監督機能の役割を損ねること、または妥協を生むことがないように配慮する必要があります。

取締役会は後発事象のように決算日後に重大な問題が発生している状況で過年度分の業績連動報酬を承認すべきではなく、引責辞任や解任の場合に退任手当などを制限することも必要です。取締役の退職慰労金は常に株主総会での決議事項とすべきです。また、当社は通常、取締役の1年を超える任期を支持していません。また、取締役への年金給付については、広範な従業員の年金制度と歩調を合わせる必要があると考えています。この点において現状乖離がある企業は、その乖離を説明するとともに、整合性のあるものに徐々に修正していくことを期待しています。

2017年9月

フィデリティ投信株式会社(FIJ)
議決権行使ガイドライン

I.一般原則とその適用

  • A. 本ガイドラインに別段の定めがない場合は、当社は現職の取締役会の議案および通常の手順による議案に賛成票を投ずる。
  • B. 本ガイドラインに規定のある議案については、コーポレート・ガバナンス・グループが議決権の行使を行う。 通常外の議案でこのガイドラインに規定のないもの、あるいは、その他特別な状況に関わるものについては、適切なアナリスト又はポートフォリオ・マネージャーが評価し、当社のチーフ・インベストメント・オフィサー又はその指名する者の検証を経て議決権行使を行う。 当社の議決権行使は常に取締役会の権限のもとに行われる。
  • C. 原則として当社は、長期的な株主価値を最大化するとともに、企業におけるコーポレート・ガバナンスの重要性を認識しこれを促進するために、保有する全銘柄について議決権を行使する。ただし、議決権の行使による株主利益が、関連して発生すると見込まれる費用(一定期間の売却制限や名義書換による費用等)を上回ると期待される場合に限る。提案された議案は全て吟味され、株主価値の毀損につながりうる決議には反対票を投ずる。
  • D. 議案に係る必要な情報が適時に提供されない場合又は会社に警告を発する目的で、例外的に棄権票を投ずる場合もある。 通常は議案について賛成票・反対票の何れかを投ずる。

II. 株主の議決権

  • A. 異なる議決権を持つ株式(黄金株や級差議決権付株式のような拒否権付の特別株式)の発行に対しては、そうした株式の発行が既存株主の最大利益に適い、かつ既存株主の権利を大きく侵害しないことを経営陣が明確に当社の納得する形で論証しない限り、反対票を投ずる。
  • B. 秘密投票や投票結果の独立集計方式採用の提案は支持する。
  • C. 一般的に株主権の制限や、株主から取締役会への権限委任に繋がる変更には、当社は反対票を投ずる。 特に配当や株式買戻しによる剰余金処分に係る権限の委任には反対票を投ずる。
  • D. 特別決議や定款変更に要する定足数の縮小に関する議案には、反対票を投ずる。
  • E. 株主の利益を損なう恐れのある株主総会基準日の変更には反対票を投ずる。
  • F. 外部会計監査人の責任を制限する変更の議案には反対票を投ずる。
  • G. 過去に不祥事や不正行為に関わったり、株主価値の創造に継続して成果をあげていない取締役の選任には反対票を投ずる。
  • H. 不祥事や不正行為の防止に十分なる貢献をしなかった監査役の選任議案には反対票を投ずる。
  • I. 会社と社外取締役あるいは社外監査役候補との関係を精査し、当該候補者の独立性が不十分の場合は反対票を投ずる。
  • J. 取締役の解任決議要件を制約する定款の変更議案には反対票を投ずる。
  • K. 定款変更議案において、株主総会に出席する代理人の数を制限する議案には反対票を投ずる。
  • L. 企業再編に関わる各種議案については個別検討する。

III.買収防衛関連議案および授権資本枠の拡大

  • A. 黄金株や級差議決権付株式の発行等による買収防衛策に対しては、当社は通常反対票を投ずる。 ただし特別な状況における時限付の対策の場合で、株主の権利を守る為に必要と認められる場合には支持を検討する。
  • B. 異常又は過度の授権資本枠の拡大に対しては、特に枠の拡大をしなくても十分に資本増加の余地がある場合には、通常反対票を投ずる。 これには、授権資本の100%以上の増加や、発行済株式総数が増加後の授権資本の30%以下となる場合が含まれる。 例外として、会社が新株発行及びその資本の使用目的に関して適切な合理性の開示をした場合は、別途検討を行う。
  • C. 優先株式による授権資本の増加に際しては、経営陣が当該優先株式を買収防衛目的に使用しないことを確約しない限り、通常反対票を投ずる。 そのような優先株式は普通株主の権利を大幅に阻害しないように構築されなければならない。
  • D. 当社は、取締役会の構成のバランスを不安定にするような修正議案には反対票を投ずる。

IV. 報酬関連提案 -株式連動インセンティブ・プラン

  • A. 株式連動インセンティブ・プランはケース・バイ・ケースで評価されるが、当社は原則として次の場合には反対票を投ずる。
    • 1. 当該プラン及び他のプランで発行を予定されている株式を合計した希薄化効果が発行済株式総数の10%以上となる場合、又は
    • 2. 取締役会が株主総会の承認を得ずにこれらの制度を大幅に改定可能とする場合、又は
    • 3. 受給権の行使期間が付与時点から一年未満の場合
  • B. 株式連動インセンティブ・プランには、受ける者の利益と株主の利益が繋がるような明確なパーフォーマンスのハードルが設定されなければならない。 当社はそうした付与のハードルについての完全な開示および透明性を提言し、ハードルが株主の利益に照らして過度に低いと考えられる場合は反対票を投ずる。
  • C. 不祥事や不正行為に関与した役職員に褒賞を与えるプランには反対票を投ずる。 また、企業業績向上との連関性がほとんどない非社員への授与プランにも反対票を投ずる。

V. 報酬に関連した提案―退職金スキーム

  • A. 不祥事や不正行為に関与するか、あるいはそのような行為を防止する適切な手段を怠った取締役または監査役に退職慰労金を支給する議案には、反対票を投ずる。 また、そのような取締役または監査役への賞与が含まれる利益処分案には、反対票を投ずる。 さらに、不祥事や不正行為に関与した会社の取締役または監査役の報酬上限を引き上げる議案には反対票を投ずる。

議決権行使ガイドラインは定期的に見直され、改定される。

 

附 則
制  定  2007年6月
改正施行  2008年6月1日
改正施行  2009年1月9日
改正施行  2011年4月22日